浮雲堂 2001年の本ベスト10
2001年 12月 26日 水曜日

まあ、よくある企画だが、
2001年に発売された本で、面白かったものを、
独断と偏見で、10冊ほど紹介する。
ヒマがあったら、ぜひ読んでみてくれ。
(順不同)



「模倣犯 上、下」
宮部みゆき
小学館

主人公を含めて、
登場人物が40人くらい出てくるのであるが、
その人たち一人ひとりの生活が、
複合的に絡み合って、壮大な絵巻になっている。
犯罪とは、こうも根が深いものなのだ。
上下2巻を一気読みさせてしまう筆力に脱帽、だぜ。
「このミス」「文春」など、
2001年のミステリーベスト10もので、
圧倒的強さでの1位は当然だろうな。



「里の在処」
内山節
新潮社

哲学者である筆者は、
東京から群馬県の上野村に移り住み、
自然と里の関係、里と人間(住む人)の関係、
そして、人間と自然の関係を模索する。
21世紀的な「理想郷」探しとも言えるエッセイだ。



「夜のフロスト」
R・D・ウィングフィールド
創元社推理文庫

シリーズ第3作。
年末の「このミス」「文春」では常連中の常連。
刑事モノの映画を例にするならば、
ブルース・ウイルスの皮肉と、
エディー・マーフィーの下品さを
足して2で割ったような、フロスト警部の言動は、
ジワリ、ジワリ、と笑いのツボにも効いてくる。
前の2作品も、ぜひ読むべし。
それにしても、創元社推理文庫は高い!



「『自分の木』の下で」
大江健三郎
朝日新聞社

小学生〜高校生向けに書かれた本であるが、
著者の体験的エピソードをふまえたメッセージは、
ガキだけに読ませておくのはもったいない。
「週刊朝日」連載時に、
そんなの理想論だ、という非難の声もあったらしいが、
この本に書かれていることが「理想」とされるほど、
日本の教育の現状は荒んじゃっているのかなあ?



「トラッカー」
トム・ブラウン・ジュニア
徳間書店

ネイティブアメリカンインディアンの、
サバイバル術を伝えた本である。
とはいえ、それは、
極限状態で生き残るための技術ではなく、
「自然の声」を聞くための技術、つまり、
自然と調和することである。
アウトドアに興味がある人は必読の書。



「ハリーポッターとアズカバンの囚人」
J・K・ローリング
静山社

もう説明の必要はないだろう。
前の2作に比べても、格段に面白くなってきた。
後半の、血わき肉躍る「大どんでんがえし」部分は、
スピルバーグが映像で見せた手法を
活字で再現した、と思えるほどに秀逸。
この本も、ガキだけに読ませておくのは勿体ない。



「センセイの鞄」
川上弘美
平凡社

もしかしたら、他の人とは、
読み方が違うのかもしれないけど、
この本は、川上弘美という作家の、
文体を味わう小説である。
今年の恋愛小説のベストだ、という書評も読んだけど、
ストーリーはあってないようだし、
リアリティーも薄いしなあ・・・。
雑誌「太陽」に連載された小説だから、
読者の中心層であるオヤジ受けを狙った、と言えば、
それも分からないでもないが。
流れ、構成、間(ま)、そして枯れた筆致を、
堪能してほしいと思う。



「世界がわかる宗教社会学入門」
橋爪大三郎
筑摩書房

9月11日に、あんなことが起こらなかったら、
間違いなく読んでなかったろうな。
独りでぷらぷら海外を旅しようとか、
海外出張がある人にはありがたい一冊。
国際社会を知るには、宗教の理解が不可欠なのである。
本書は、世界の代表的な宗教が、
どういう経緯で、どういう形で、
人々の日常生活や文化などと関わっているのかを、
わかりやすく教えてくれる。



「それがぼくには楽しかったから」
リーナス・トーバルズ/デイビッド・ダイヤモンド
小学館プロダクション

リナックスという名前は、
いまや知らない人はほとんどいないだろう。
この本は、
フィンランドのコンピューターオタクだった
リーナス・トーバルズという学生が、
マイクロソフトすら脅威と感じるOSを、
いかに作り出し、普及させていったかを、
軽妙なタッチで綴る、一種の自伝である。
なぜ「オープンソース」を導入したのか、
このプロジェクトはいかにして運営されてきたかなど、
リナックスについてまわった「疑問」への「回答」もある。
技術者だけに読ませるには惜しい。



「茄子 第1巻」
黒田硫黄
講談社

いま、月刊「アフタヌーン」で連載中のマンガである。
黒田硫黄の作品は、
いままで読んだことがなかったのだけど、
これ1冊でとりこになった。
日常生活の断片を切り取ったような
連作短編集なのだけど、ひとコマひとコマが深いのよ。
とくに、モノを食べるシーンは官能的ですらある。
蛇足だが、本書にまかれたピンク色の帯には、
収録作品の一つ「アンダルシアの夏」について、
「このおもしろさが判る奴は本物だ」と
宮崎駿が文を寄せているぞ。






開設宣言
2001年 12月 7日 金曜日

12月8日に、ホームページ開設するから、と
公言してしまい、後に引けなくなってしまった。

だから、とりあえず、つくったさ。

HTMLの入門書を首っ引きにして、
ほぼカタチができあがるまで、まるまる3日がかり。
「表紙」なんか、4回もつくり直したぞ。

でも、本当に、本当に、エネルギーが必要なのは、
きっと、スタートではなく、続けていくこと。
なるべくたくさんの文章と写真を掲載するつもりです。

これからの中身に、請う、ご期待。





HOME
DIARY