日高山脈・ヌビナイ川遡行
ソエマツ岳、ピリカヌプリ登山’07

(ソエマツ岳標高1625m、ピリカヌプリ標高1631m)


いざ、泣く子も黙る、ヌビナイ川右股沢上流部へ!

時は、2007年8月18日。
前々日16日は、埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市で、
日本最高気温40.9度を記録した記念すべき日である。
しかしながら、この日から、北海道は、
独断と偏見と経験から断言するならば、秋になったのだった。

ヌビナイ川右股沢を遡行するには、
曖昧な表現だけど「中級」以上の経験と技術がないと無理。
札内川8の沢を遡行してカムエクへ登ったくらいでは、
お話にならないレベルだと言える。
初心者だけのパーティーはゆめゆめ近づくべからず!

したがって、
カメラマンの超絶神域雨男と二人だけ行くのは不安なので、
昨年の夏の戸蔦別川遡行幌尻岳登山の時と同じく、
日高山脈の生き字引き・K氏に、同行をお願いした。


さて、1年ぶりの日高である。
しかも、ヌビナイ川遡行である。
白い岩床に緑の水があふれる「カマ」が、
7つ連続して現れる、通称「七ツ釜」は、
北海道はもちろん、全国の沢屋が憧れる、
日高、いや、北海道、いや、日本有数の、沢の絶景。
否が応でも、期待が高まり、
アドレナリンがふつふつ分泌する。

しか〜し。

「虎穴に入らずんば虎児を得ず」。

そう、大きな獲物をゲットするには、
それ相応の代償が必要なのだ。

それが、我が人生の中でも、
悪夢ベスト3(笑)に入る「あのシーン」である。
思い出すと、今でも、だんだん呼吸が乱れ、
心臓が早打ち、喉が渇き、震えがくる。

重さ30キロ以上もあるバックパックを背負った状態で、
(しかも、カメラ機材が入ったウエストバッグもしてる)
手がかり足がかりがほとんどない壁にへばりつき、
スパイダーマンのように平行移動するのである。

ん?この恐怖、ピンとこない?
じっくり、想像してみてください。

立っている場所は、斜度60度くらいの断崖絶壁。
20〜30センチの幅しかない「道」を、
カニのように横ばいで進んでいるわけさ。
で、肩越しに下を見ると、遥か30m下に、
白く尾を引きながら、激流が走っているのが見えるのよ。
(と、いうか、遮るものがないから、見えてしまう!!)

で、進む先の手がかりは、つるつるした岩と、
岩の上にわずかにある草付きの土のみ。
足がかりは、ちょうど靴1足分の大きさの、土のカタマリ。
これがね、断崖の下にむかって20度くらい傾いた、
つるつるの岩の上に、申し訳程度に乗っているだけ!!
そっとそっと足を置くと、ずずず、と動くのさ!

きゃ〜。

高さ30mの断崖絶壁で、動く足場!
まだ生きてるぞお、まだ生きてるぞお、
でも、落ちたら死んじゃうぞお、と、ほぼ極限状態で、
思わず、自分の人生を振り返ってしまった(笑)。
(とりあえず、まだ、死ねないなあ……)

「もし落ちたら、まず、バックパックのバックルを外して……」
などと、縁起でもないけど、ついつい、
落ちたときのイメージトレーニングもしてしまうのよ(笑)。
って笑い事じゃないのだ!

沢登りの技術を駆使した、その時の一挙一動が、
本当に生死を分ける場面なんだな、これが。
(もちろん、精神的に相当な強さを要求される)

ふう(ため息)。

またまた、ちょっとだけ、ドキドキしてきたぞ(笑)。

その、総延長200m以上に及ぶと思われる、
高度感たっぷりの長い長い左岸のトラバースは、
「超難関区間」の前後も、まったく気を抜けない。
通過するのに要した10分?20分?の長く濃密だったこと!

しかも、恐ろしいことに、迂回路はないので、
「超難関区間」を、行きと帰り、
2回通らなければならないのだ!


ま、いいや、先に進もう。

一度、川原に下りて、しばらく沢の中を歩き、
今度は、右岸を大きく高巻く。
いよいよ憧れの七ツ釜との対面だ。
この世のものとも思えない美しい光景!!
思わず感嘆の声が漏れ、さっきまでの緊張はなんのその、
カメラのシャッターを押しまくったさ。
そう、ここで、ようやく、虎児を手に入れた、わけだ(笑)。

K師匠はともかく、ぼくは、山に入っていた4日間、
帰りに再びご対面する「難所」のことを考えると、
ソエマツ岳を目指して、標高790mから右の沢に入り、
シャワークライミングを余儀なくされているときも、
ソエマツ岳からピリカヌプリへ向かう稜線で、
背丈以上もあるハイマツ漕ぎをしているときも、
ずっと心臓バクバク・ドキドキだった。
寝袋にもぐり込んでからも、夢にまで見たぞ!
(あとで聞いたら、雨男もおんなじ心境だったとか)


ハナシはこれからもっともっと盛り上がるのですが、
このヌビナイ川右股沢遡行も「お仕事」なので、
例によって、詳しい内容は、来年5月か6月発売の、
某雑誌でご確認いただきたく存じます。

続きをもっと読みたい?
気が向いたら書くね(笑)。


参考タイム(すべて縦走装備、取材のための撮影あり)

初日(2007年8月18日)
帯広市内〜ヌビナイ川右岸林道終点 1時間45分(車)
林道終点(クマの沢川出合い)〜標高507m分岐 3時間(沢)
標高507m分岐〜標高790m分岐(テント泊) 5時間(沢)
行動時間 8時間

2日目(8月19日)
標高790m分岐〜ソエマツ岳 5時間(沢)
ソエマツ岳〜1529m大岩の手前の広場(テント泊) 4時間30分
行動時間 9時間30分

3日目(8月20日)
1529m大岩の手前の広場〜ピリカヌプリ 6時間
ピリカヌプリ〜標高790m分岐(テント泊) 4時間(沢)
行動時間 10時間

4日目(8月21日)
標高790m分岐〜標高507m分岐 3時間(沢)
標高507m分岐〜林道終点(クマの沢川出合い) 2時間(沢)
行動時間 5時間



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